オカリナを吹く少年

オカリナを吹く少年

(978-4-88748-237-1)

寺崎 ちえこ

少年のナイーブな感性をやさしく包み込んだ待望のファンタジーロマン!!

しんの後に続いて、樫の木から夜空に向かって両手を伸ばすと、瞬間的にフッと体が宙に浮いた。しんの吹くオカリナの、風に乗った爽快なメロディーが、ぼくを広大な空の旅へと誘う。翼をイメージして両手を広げると、まるで鳥になった気分で夜空に舞い上がった……。
病気で亡くなった双子の妹に会うために、ぼくはオカリナを吹く不思議な少年と夜空へ旅立った……。

年を重ねていくごとに、何気なく過ごしていく日々が、実はすごく貴重なことなのだと気づかされる瞬間がたくさんあります。そんな思いが強くなったのはここ数年のことです。
私が福祉の仕事に携わり、多くの方たちとの出会いや別れがあったからでしょうか。心や身体に障害を持った方たちとの出会いは、正直私にとって衝撃的なものでした。内心とても気の毒にも思いました。しかし徐々に触れ合っていくうちに、本当にかわいそうなのは、彼らをそんなふうにとらえていた自分自身だということに気づきました。
私がそうした優しい方たちを見送ったとき、その究極の寂しさとともに、また心はこの上ない感謝の気持ちでいっぱいになりました。そしてその感謝の気持ちにどう答えたらいいのか自問自答を繰り返しながら、気がつくといつの間にかノートに向かい、ペンを走らせていました。そして、出来上がったのがこの作品なのです。(「あとがき」より)
日本文学館出版大賞特別賞・コスモス文学賞奨励賞授賞作

四六判/上製/112頁/定価 1100円(本体1000円+税)
ISBN 978-4-88748-237-1
2011年5月10日 第1刷発行

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