2014年3月15日、読売新聞から、転載します。
http://www.yomiuri.co.jp/local/tochigi/news/20140427-OYTNT51102.html

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田中正造を研究する市民団体「渡良瀬川研究会」副代表の赤上剛さん(73)が今月、単行本「田中正造とその周辺」(随想舎)を発刊した。偉人として描かれることの多い正造だが、あえて人間らしい部分に焦点をあてた。20年以上に及ぶ研究や論文の成果を詰め込み、「通説に逆らい、実像に迫った」と振り返る。(市川大輔)

<真の文明ハ山を荒さず、川を荒さず…>

この格言に象徴される正造の人権、自治、平和、環境思想。たっぷり蓄えた白い顎ひげ、くたびれた蓑みの姿で弱者に寄り添っているイメージ。赤上さんはこれらを「あまりに偏っている」と切って捨てる。

「たばこも酒も断つと言いながらやめない。愛人はいるし、遊郭も通っています」。傲慢な一面も伝えたいと、本の表紙には衆院議員になりたてのふてぶてしい表情を使った。

「我々と別次元の人ではない」。人間らしく問題にぶつかっては失敗を繰り返し、死ぬまで成長し続けた。その過程を含めて学ぶからこそ、「晩年に高まっていった思想が理解できるし、より魅力的に見える」と指摘する。

さらに、正造とその周りの人がたどった史実も丹念に検証。「正造だけをいくら見ても真実が見えない」と、同じ時代を生きた政治家らとの人間関係、時代背景をひもとき、新たな歴史的解釈も加えた。

大手損保会社に勤務していた50歳頃から、満員電車に揺られながら文献に目を通した。週末には古本屋や国会図書館に通い詰め、1世紀前にもなる当時の資料に当たって追究してきた。

昨年、没後100年を迎えた正造。研究者も少なく、顕彰する機運は静まりつつあるが、「この本で生身の正造を知ってもらいたい」。64項目に分け、研究者から一般の人まで興味のある項目から読めるように工夫した。

A5判、447ページ。税別2500円。県内の書店などで扱っている。問い合わせは随想舎(028・616・6605)へ。